障害年金のヒント

2012.05.14

障害年金

 私は国民年金に加入しており、現在は傷害基礎年金2級を受給しています。しかし、その手続きでは非常に苦労しました。その経験から、これから障害年金の手続きを取ろうとしている方に、少しでも参考になればと思い、このページを作成しました。

 以下は、私の経験から学んだアドバイスです。

 

障害年金とは?

 障害者手帳を取得した時に、誰もが最初に思い至るのは「障害年金はどうなるのだろう?」と言うことでしょう。私も手帳を取得した時、「障害者年金の手続きをとった方が良いですよ。」と保健所で保健婦さんに言われました。ところが、この「障害年金」という言葉にはとんだ落とし穴があります。

 国民年金のパンフレットなどには「障害を負った場合に受給できます。」という具合に、簡単な解説しか書かれていませんが、はっきり言って、それは大いに誤解を生む表現です。

 結論から言って「障害年金」とは、「一定の要件を満たしている年金加入者が、障害を負った場合に請求できる年金」です。つまり、障害者になれば自動的に支給されるわけではないのです。

 この場合の「一定の要件」とは、まず年金に加入して一定期間保険料を納付していなければなりません。所定の手続きをして免除されている期間もその中に含まれます。しかし、年金に未加入であったり、免除申請もせずに保険料を滞納している期間は、要件を満たしていることにはなりません。また、障害の程度が軽い場合や、「国民年金の法律で定められた認定基準」に達していない場合も要件を満たしていることにはなりません。

 そして、障害年金だけではなく老齢年金でも同じですが、基本的に年金が支給されるのは「本人が請求した場合」に限られます。自分で請求しなければ、決して支給されないのです。そして、その請求を行うには様々な書類を準備して提出しなければなりません。しかし、その手続きは障害手帳の申請ほど簡単ではありません。しかも、手続きの仕方や認定基準など、詳しいことが書かれたパンフレットのような物はなく、一般にはほとんど知られていません。ですから、患者本人が自分で気が付いて手続きをしなければ、一生知らずに終わってしまうかも知れないのが、今の年金制度の現状です。

 では、自分が障害年金を請求できるかどうか、どうやって調べられるでしょうか。


相談するには?

 「病気が関係することは医者に聞くのが一番」と思うのは大間違いです。医者はもとより、病院も障害年金の手続きに関してはほとんど知らないと思った方が良いでしょう。私など、明らかに基準を満たしているのに、病院のソーシャルワーカーから「あなたは対象外です。」と言われました。もし、そこで私が制度のことをよく知らなかったなら、その言葉を真に受けて死ぬまで障害年金の請求をしなかったかも知れません。親切な友人が国民年金の法令や障害年金の認定基準に関する法令のPDFファイルを、厚労省関係のホームページからダウンロードして送ってくれていたので、それを病院に持って行って反論し、納得してもらえました。もしその写しがなかったら、こちらがいくら主張しても、診断書を書いてもらえなかったかも知れません。

 そうした体験はごくまれな方かも知れませんが、病院のソーシャルワーカーでさえ個別の障害について把握できないほど、多くの取り決めがあり、素人には理解しきれない複雑なものなのです。だから、ここはやはり「年金のプロ」に尋ねるのが一番です。

 では、年金のプロはどこにいるのでしょうか?残念ながら市町村役場の窓口ではありません。市町村の窓口は書類の受け渡しのみ委託されているだけで、年金制度全体を熟知しているわけではありません。大まかな事は分かるかも知れませんが、個別のケースについて判断はできないと思って下さい。従って、一番確かなのは最寄りの「ねんきん事務所」に尋ねることです。「ねんきんダイヤル」というのもありますが、「ねんきんダイヤル」では個別のケースについて指導してはもらえません。面倒でも、最寄りの「ねんきん事務所」に出向くか、せめて電話で問い合わせてみるべきです。

 また、障害年金を専門に扱っている「社会保険労務士」に相談することもできるでしょう。たいてい相談料は無料ですし、自分で手続きできそうにない時は、手続きの代行を有料でやってもらえます。(料金は成功報酬で、支給される年金の2〜3ヶ月分が相場。)ただし、「社会保険労務士」にも色々な専門があるようで、障害年金の請求を専門としていない人に相談しても、らちがあかないかも知れませんので、注意しましょう。

 とにかく、相談する相手を間違えると不愉快な思いをするだけでなく、手続きそのものが暗礁(あんしょう)に乗り上げることになりかねません。相手を選びつつ、納得ができるまで何度でも相談しましょう。


用語に注意!

 障害年金のことを調べていて、私が一番苦労したのは「専門用語」です。単に難しい言葉が使われているというだけではなく、よく知っている言葉なのに、それが意味することが異なっている場合があります。要するに、お役所言葉のオン・パレードなんです。

 

・障害手帳と障害年金は全く異なる

 手帳にも年金にも頭に「障害」と付いていて、しかも「1級」、「2級」と言う等級があります。たいていの人は「障害手帳2級=障害年金2級」と思ってしまいます。私も最初はそう思っていました。しかし、この論理は全く通りません。手帳と年金はそれぞれが独自に「障害」と認める症状と等級を定めています。従って、2級の手帳をもらっても、年金には該当しない場合もあります。また、ガンやその他の病気では、手帳には該当していなくても年金が支給される場合があります。

 基本的に障害年金は、「障害を負ったからもらえる」と考えるのではなく、「病気やケガで生活が困難になったので請求する」と考えた方が良いでしょう。何らかの病気やケガで日常生活や就労に困難が生じた時は、自分が障害年金に該当するかどうか、最寄りの年金事務所で確認をした方が良いでしょう。場合によっては、障害年金を請求せずに、老齢年金をもらえるまで保険料を納付していた方が良いこともあります。それは、その人の年金の加入状況によって異なりますので、しっかりと確かめる必要があります。

 それで、障害年金の場合、「2級」が標準で、「1級」は重症と認められた人がもらえる特別な年金と考えてください。尚、国民年金では「1級」と「2級」しかありませんが、厚生年金では「3級」があります。しかし、これは一度限りの見舞金のような物です。本来なら、手帳の等級と混同されないように、「級」と言う言葉で表示しない方が良いと個人的には思いますが、法令でこう定められているので、私たちの方で考え方を気をつけなければなりません。

 

【年金の等級の考え方】

1級=特別

2級=標準

3級=見舞金(厚生年金のみ)

 

・「初診日」

 障害年金を請求する際に最も重要視される日付です。文字通り、初めて網膜色素変性症と診断された日付のことを指します。それがつい最近なら覚えているかも知れませんが、何年も前に診断を受けていたなら、具体的な日付など忘れていることがほとんどでしょう。しかし、その具体的な日付が問われます。適当に書くことはできません。そして、網膜色素変性症であると診断された病院の診断書の提出が求められます。

 しかし、病院でカルテの保管を義務づけられている期間は5年、病院によっては10年ぐらいは保管している場合もありますが、カルテの保管期間が過ぎるとそのカルテは破棄されてしまいます。すると、医師も診断書を書くことができません。日付の入った診察券やその時の領収書、学校や職場の健康診断の記録などの公的文書、家計簿や日記などの私的文書等、とにかく自分が網膜色素変性症と診断された日を特定できる物証を探さなければなりません。

 この初診日をまず特定し、それを示す何らかの証拠を見つけなければ、手続きは進みません。ここが最もハードルの高い所です。

 

・「障害認定日」

 文字だけ見ると、障害手帳をもらった日のように思うかも知れませんが、先にも述べたように、障害手帳と障害年金は関係ありません。この「障害認定日」とは、前述の「初診日」から「1年6ヶ月経過した日」と法律で定められています。つまり、障害者として認定された日ではなく、「障害年金の受給権が発生すると認定された日」と思って下さい。通常は、この「障害認定日」から障害年金を算定して支給されます。ただし、網膜色素変性症は少しずつ病状が悪化し、初診日では障害と呼べるほどの重症ではなく、何年も経ってから重症になることがほとんどです。その場合、「障害認定日」には障害年金の受給権は発生しません。

 

・「事後重症」

 前述の「障害認定日」には症状が軽くて障害年金を請求できなくても、後に病状が悪化し重症となった場合、「事後重症」として年金を請求できます。網膜色素変性症の場合、こちらで請求するケースが多くなるでしょう。読んで字のごとく「障害認定日の後に重症になった」と言うことです。「事後重症」で請求する場合は、請求日の翌月分から障害年金が支給されることになります。ですから、自分が障害年金に該当することが分かったら、すぐに手続きを進めないと、その分年金の支給が遅くなります。自分の症状が認定基準を満たしているかどうかを知りたければ、最寄りの「ねんきん事務所」に早めに問い合わせて相談しましょう。

 

・「重症」

 ここまで出てきた「重症」と言う言葉は、単に病気が重いとか、障害者手帳の等級が高いとかではなく、国民年金や厚生年金で定められている「認定基準」に達している状態と言うことです。同じ眼科の病気でも、弱視の人と網膜色素変性症の人とでは基準が異なるので、同じ等級の障害者手帳を持っていても、同じ等級の年金を受給できるとは限らないようです。

 認定基準では視野障害よりも視力障害の方が重視されています。両眼の矯正視力の合計が認定基準に達する視野障害者は、より重症度が高いと見なされます。

 

・「認定基準表」

 一般人はなかなか入手できません。私も、友人が探してくれたので入手できましたが、自分では探しきれませんでした。市役所や病院では入手どころか閲覧すらできないかも知れません。しかも、知らないうちに改正されていたりするのです。視野障害も、以前は認定機銃に盛り込まれていませんでしたが、いつの間にか改正されて、視野障害も認定基準の項目に含まれていました。

 問題は、そうした改正がなされても、市役所や病院、そして障害者本人にはアナウンスされないと言うことです。だから、何度も言いますが、最寄りの「ねんきん事務所」に問い合わせる必要があります。

 

・「20歳前障害」

 かつては、20歳前に初診日がある場合は、たとえ事後重症であっても、障害認定日が年金加入前となるので、障害年金の請求は認められませんでした。しかし、その後法律が変わって、たとえ20歳前に初診日があっても、事後重症で障害年金の請求ができるようになりました。こういう場合「20歳前障害」と呼ばれますが、20歳前に障害者手帳の交付を受けていたかどうかは関係ありません。

 20歳前障害の場合、具体的な初診日を証明できなくても、「20歳前に網膜色素変性症であると確かに診断されていた」と言うことが、直接、あるいは間接的に立証できれば、請求が認められるようです。つまり、病院のカルテが無くても、学校の健康診断の記録や、担任の先生の日誌、自分の日記、家族の日記、親の家計簿、先生や友人の証言などがあれば、認めてもらえるようです。

 私も20歳前障害です。母が初診の病院の診察券(日付入り)を保管しており、それを提示して、初診の病院で「初診日」の診断書を書いてもらえました。そして、事後重症ということで請求することができました。

 ただし、20歳前障害の場合、年金支給には所得制限があります。所得に応じて支給額が減額されたり、支給が停止されることがあります。詳しくは「ねんきん事務所」で確認して下さい。

 

・「初診日証明・受診状況等証明書」

 現在の病状は、現在通院している病院で診断書を書いてもらうことになりますが、「初診日」を証明するために医療機関で診断書とは別にこの書類を書いてもらわなければなりません。初診の病院と現在の病院が同じなら特に問題はありませんが、初診の病院が別の病院だった場合、カルテが残っていなかったり、担当の医師が既にいなかったりすると、なかなか書いてもらえないかも知れません。私の場合は、初診の病院の診察券、それも受診した日付が書かれている物が保管してあったので、それを元に書いてもらえました。しかし、そう言う物がない場合、医師を説得するか、別の方法を探らなければなりません。その点に関しては最寄りの「ねんきん事務所」に相談するか、年金専門の初回保険労務士に相談するしかないでしょう。

 ただ、この書類に限り、書式が市町村によって異なります。だから、自分が受け取った書類と、ねんきん事務所や社労士が持っている書類が若干異なっている場合があります。それで、ねんきん事務所や社会保険労務士に相談する際には、まず、お互いが持っている書類の書式がどうなっているかを確認した方が良いでしょう。さもないと、話が通じないことがあります。私もそれでとても困惑しました。


読みやすく書くこと

 医師の診断書と初診日証明以外の書類は自分で書かなければなりません。審査する人たちも人間です。読みにくい文字やわかりにくい文章は、判読するのに時間がかかります。ただでさえ大変な労力なので、やはり読む人のことを考えて書くのがマナーだと思います。

 変な誤解が生じたり、事実関係を確認する必要が出てきたりすると、それだけ審査が長引きます。読みやすく、わかりやすい文章を心がけるなら、その分審査もスムーズに進むはずです。

 また、記述内容が曖昧だったり、日付や数字に誤記があると請求そのものの信ぴょう性が疑われるかも知れません。書いた内容に誤りや、誤差がないように、良く読み返してチェックしましょう。

 尚、誰かに代筆してもらうことも可能です。私は父に代筆してもらいました。また、自分の状況を説明する欄がとても狭くて書ききれないので、その場合は「別紙参照」として、パソコンで作った別紙に続きを印刷して提出しました。別紙に番号を振り、ちょっとした論文のようになりましたが、できるだけこちらの状況をわかりやすく説明したつもりです。

 そのせいか、2ヶ月ぐらいで裁決されて、障害年金を受給できるようになりました。場合によっては半年も待たされることもあると聞きました。わかりやすく、正確な記述をすることはとても大切だと思います。年金は手帳のように「申請」するものではなく、自分に受給資格があることを訴える「裁定請求」なのです。つまり、裁判を起こすのと同じようなものです。


手に負えない時は・・・

 自分一人ではどうしようもないと思える場合もあるでしょう。そんな時は、年金を専門に扱う社会保険労務士に手続きの代行を依頼することをお勧めします。私は最初、無料の電話相談で相談をしましたが、もし、母が初診病院の診察券を保管していなかったら、社会保険労務士にお願いしていたでしょう。

 成功報酬として年金の2〜3ヶ月分がかかりますが、具体的な金額は労務士によって異なります。ただ、やはり年金2〜3ヶ月分というのは高額です。自分でできることに超したことはありません。それで、私も家族や友人達の協力を仰ぎながら、自分で請求することにしました。

  ところが、実際に自分でやってみて思いましたが、年金2〜3ヶ月分というのは決して高くはありません。自分がもし他人の手続きを代行するとしたら、そのぐらいもらわないとやってられません。正直、もう二度とこんな面倒な手続きはしたくありません。

 請求手続きをしなければ、障害年金は絶対に支給されません。それを考えると、2〜3ヶ月分の年金額を支払ってでも、誰かが手続きしてくれるなら、それは大変ありがたいことだと思います。それに、支払いは「成功報酬」であって、前払いではないと言うことにも注目できます。

 どのように考えるかは、個人個人で異なると思いますが、自分で請求できるのか、専門家に依頼するのか、よく考えて手続きをするべきです。

 

【参考までに・・・】

 私は下記で電話相談をしました。親切に色々と教えてもらえました。

 障害年金支援ネットワーク


あとがき

 私は年金の専門家ではないので、誰かの相談に乗ることはできません。これから障害年金を請求する人の参考になればと思って、自分の経験を元にこのページを作りました。分からないことや、個別の相談は決して素人に頼らず、必ず最寄りの「ねんきん事務所」に問い合わせてください。

 

INDEXへ

 

 

メールはこちらから