ピアノの先祖1:チェンバロ
ピアノと同じような鍵盤のついている楽器をみなさんはどのぐらい知っているでしょうか。たとえば、オルガン、キーボード、アコーディオン、鍵盤ハーモニカと言うのもありますね。でも、チェンバロというのはあまり聞いたことはないかもしれません。でも、グランド・ピアノの形はこのチェンバロが元になっているのです。
このチェンバロは国によって呼び方が違います。“チェンバロ”と呼ぶのはイタリアです。イギリスでは“ハープシコード”、フランスでは“クラヴサン”と呼びます。
チェンバロの形は図1のようにグランド・ピアノを少し細身にしたような形ですが、音を出す仕組みは全く違います。ピアノは弦をハンマーでたたいて音を出しますが、チェンバロはプレクトラムという爪で弦をはじいて音を出します。ちょっと見にくいかもしれませんが、図1の下にある機械のような絵がチェンバロの音を出す仕掛けです。左側の黒い鍵盤を押せば、右側の棒のようなものが上に上がってプレクトラムが弦をはじくようになっています。
そして、チェンバロの鍵盤はピアノの鍵盤と違って、白と黒が逆になっているものもあります。つまり、ピアノで「ドレミファソラシド」を弾く白鍵が黒くなっていて、シャープやフラットの時に使う黒鍵が白くなっているのです。なぜそうなっているのかというと、一説には女性の白い指をより白く美しく見せるためだそうです。〈ホントカナ...(^_^;)〉
また、電子オルガンのように2段の鍵盤がついているもの(図2)や、パイプオルガンのように足鍵盤の付いているものもあったそうです。大きさもまちまちで、一つの鍵盤に一本の弦が付いている小型で持ち運びのしやすい物から、一つの鍵盤に数組の弦が付いている大型の物まであったようです。
チェンバロはピアノと比べて音が小さく、余韻もあまりありません。私も一度だけチェンバロの演奏会を聞いたことがありますが、ピアノのような迫力のある音は聞けませんでした。でも、決して弱々しい音ではありません。独特の趣のある繊細な音は、ピアノと異なる魅力を持っています。また、チェンバロの演奏家は強弱を出せない分、装飾音符を多用して色々と工夫して演奏するそうです。ですから現在
ピアノで使われる色々な装飾音符は、チェンバロの演奏家達が培ってきた技術なのです。
このチェンバロがいつ頃から使われていたのか詳しいことはわかりませんが、1400年ごろの色々な文献にチェンバロに近い楽器の名前がでてくるそうです。1400年ごろと言えば日本はまだ室町時代で、1397年に金閣寺が建てられたばかりの頃でした。それからチェンバロは様々な工夫が加えられ発展し、多くの音楽家に愛されてきましたが、ピアノの普及と共に次第に使われなくなっていきました。しかし、現代ではその価値が見直され、演劇のBGMや効果音、ジャズなどにも用いられるようになりました。コンサート・ホールにもピアノと一緒にチェンバロを所有しているところが増えています。この辺では旭川市の大雪クリスタル・ホールがチェンバロを所有しています。また、音楽大学でもチェンバロ科を設けているところもあるようです。
さて、これがピアノの形の元になった楽器「チェンバロ」の話です。次はピアノの音の原型となる楽器についてお話ししましょう。
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